|
2006年 04月 08日
(1994年 フィンランド・ドイツ/62分) 原題:Pidä huivista kiinni, Tatjana/Take Care of Your Scarf, Tatjana 監督・制作:アキ・カウリスマキ 脚本:アキ・カウリスマキ、サッケ・ヤルベンパー 出演:カティ・オウティネン、マッティ・ペロンパー、エリナ・サロ、マト・ヴァルトネン 【あらすじ】 60年代のフィンランド。コーヒー中毒の仕立て屋ヴァルトは母親がコーヒーを切らしたことに腹を立て、ウォッカ中毒で修理工の友人レイノと車で町を出る。2人は、故郷へ帰る途中のエストニア人とロシア人の2人連れの女性と知り合い、彼女達を車で港まで送ることにする。 【感想】 「過去のない男」という映画のなんとも不思議な”間(ま)”がツボにはまり、この監督の他の作品はどうなってるんだと思い観てみることに。 時間わずか62分。やっぱり少ない言葉と無表情な人達。 この無表情さと慌てず騒がず加減のおかげで、どこにでもいる平凡な人たちの平凡な日常のはずが何か非現実感ただよう空間へと迷い込んだような気分になる。 そして淡々と流れていく時間。 これに比べれば、静かな映画だと思った「過去のない男」だって波乱万丈だ。 だけどそこには必ず気持ちがあって、2人以上の人間がいればお互いにいろんな感情が生まれてくる。 ヴァルトもレイノも女性2人に対してまったくと言っていいほど口を利かないし、何を考えているのかさっぱり分からない。でもだからこそ、何気ない行動や仕草、表情のほんの少しの変化で百の言葉を費やすよりもその想いは観ているこちらにダイレクトに伝わってくる。 そしてこの4人のわずか数日間の一風変わった旅の間に起こった気持ちの変化も、終盤にかけてはっきりと分かってくるのだ。 言葉もなくおずおずと寄り添うタチアナとレイノ。 頑なにコーヒーとウォッカしか飲まなかった男たちが飲んだ紅茶。 新しい人生を選んだ男と日常に戻っていく男。 表面上は何も変わらない日常でも、彼の心の中では確実に何かが変わったはず。 それにしてもやっぱり独特の空気がここには流れている。 いくら言葉で説明しても説明しきれないんだけど、こちら側が無意識に予測する間とは微妙にずれていて、でもそのずれは決して不快なものじゃなく思ってもいなかった時に笑わされ、驚かされ、切なくさせられる。しかもその笑いもなんだか不思議。もしもそうとは知らずに観てもアキ・カウリスマキの映画だと一目で分かるに違いない。 なんだかくせになってしまいそう。 とどめのラストシーン。まいりました。 冒頭でヴァルトがコーヒーをきらした母親に腹をたてて、母親を部屋に閉じ込めて家を出るのだけど、家に帰ったヴァルトは何事もなかったように母親を閉じ込めたままだった(!)部屋のドアを開け、家を出る前と同じようにまたミシンに向かう。そして母親も何も言わず部屋から出てきてコーヒーをいれ始める・・・って、あわわわわおかーさーん!何日たってんねん!!(笑) 2006年4月7日:DVDにて観賞
by kotaro_27149
| 2006-04-08 10:19
| 映画感想
|
ファン申請 |
||